第一生命保険株式会社東京都千代田区に2004年竣工したオフィスビル、九段ファーストプレイス。オフサイトPPAによる電力は、第一生命が管理するオフィスビルの共用部を主体に供給している
需要家主導による太陽光発電導入レポート

金融機関初のオフサイトPPAで
再エネを創出・追加して次世代につなぐ

令和3年度補正第一生命保険株式会社
東京都千代田区に2004年竣工したオフィスビル、九段ファーストプレイス。オフサイトPPAによる電力は、第一生命が管理するオフィスビルの共用部を主体に供給している

本事業の概要

第一生命保険株式会社は、生命保険を通じて人々に安心と安全をお届けするとともに、ご契約者さまから預かった約38兆円という資産を運用している。当社は事業活動を通じて、一人ひとりが幸せに生きるための持続可能な社会づくりを目指しており、well-beingへの貢献は、当社のビジョンでもある。
第一生命は、2019年に国内の生命保険会社として初めてRE100に加盟し、事業活動で消費する電力の100%再生可能エネルギー化を2023年度までに達成するという高い目標を宣言した。また新規の火力発電に対する投融資を禁止するなど、大手金融機関の先頭を切って気候変動対策への積極的な姿勢を示してきた。  

第一生命保険株式会社今回お話を伺った、第一生命保険株式会社 不動産部長 堀雅木様

RE100の早期達成に向けた取り組みの一つとして導入したのが、国内の金融機関初となるオフサイトPPAだ。第一生命保険では、2021年より補助金制度を活用し、全国各地の太陽光発電所でつくられた電力を首都圏に保有するオフィスビルに供給する、オフサイトPPAのスキームでの再エネ調達を導入している。
発電事業会社はいずれもクリーンエナジーコネクト、小売電気事業者はオリックス株式会社、スマートエコエナジー株式会社と連携した。現時点でのオフサイトPPAによる第一生命専用の太陽光発電所は累計87か所、合計出力は4.3MW-AC、年間発電量は847万kWhとなる。このうち、本事業では55か所、出力2.7MW-AC、年間発電量531万kWhを見込む。

本事業の導入経緯

第一生命では2020年度、RE100達成に向けた取組み方針を社内で策定した。まずは、オフィスの省エネ対策を強化。日中の照明の部分消灯やLEDの照明導入、省エネ効果の高い空調・照明設備への切り替えなどにより、電力使用量は年々減少している。
また、いち早く再生可能エネルギー化を達成するために、非化石証書を組み合わせた電力メニューからの電力購入なども行ってきた。しかし冒頭にも述べた通り、RE100達成目標の根底にあるのはサステナブルな社会の構築であり、単純に環境価値を購入すればいいという発想ではない。第一生命は、できるだけ再生可能エネルギーを創出し、新たに追加する事で、次世代につなげていくことが重要だと考えている。そのためにスピーディな再エネ化(証書等の購入)と並行して、より本質的な取り組みとして追加性のあるオフサイトPPAの導入にいたった。

発電事業者のクリーンエナジーコネクトは、法人向けに再生可能エネルギーのソリューションを提供するベンチャー企業だ。第一生命は、ESG投資の一環であるインパクト投資として同社に出資も行っている。オフサイトPPAの補助金制度についてはクリーンエナジーコネクトからの紹介によるもので、本事業は同社と議論を重ねながら進めていった。

第一生命保険株式会社東京都千代田区に2004年竣工したオフィスビル、九段ファーストプレイス。オフサイトPPAによる電力は、第一生命が管理するオフィスビルの共用部を主体に供給している

本事業がもたらすメリット

第一生命のオフサイトPPAの特徴として、小規模な発電所を全国各地に設置する小規模分散型であることがあげられる。この方法を選択した主な理由は、スピードと地域性だ。国内には大規模な太陽光発電所に必要な適地が少ない上に、追加性も限られる。また発電ボリュームが大きいと系統連系にも非常に時間がかかる。第一生命では、より早期の目標実現に向けて、再エネの調達にはスピードが重要と考えているため、今回の小規模分散型を選択した。
また生命保険事業は全国で展開しているため、小規模でも全国に分散させることに大きな価値がある。今後もこの事業を通じて、各地域とのつながりをより大切にしていきたい考えだ。

また、環境証書等だけでなくオフサイトPPAを活用した再エネの普及拡大に向けた取組みの結果、令和4年度新エネ大賞[導入活動部門]を受賞するなど、客観的な評価を得られたことも大きい。こうした取組みがボランティアや社会貢献のためだけではなく、事業として成立することを金融業界で取り組むパイオニアとして示すことができた。
投資用物件全体の再エネ化の実現で、コストを上げずにクリーンなエネルギーに切り替えられた点について、テナントからも非常にポジティブな反応が得られている。今後、追加性のある再エネを継続且つ定期的に調達することで、物件の付加価値をより高めることにもつながると期待される。

第一生命保険株式会社群馬県にある第一生命専用の太陽光発電所。「発電設備の停止や損壊などトラブルに対するリスクマネジメントの観点からも、小型分散型は望ましい」と堀部長

本事業における補助金制度のアドバンテージ

オフサイトPPAの契約単価は、通常の電気料金よりも高くなるケースもまだまだある。CO2削減効果はあるが、その分コストが増えることを社内やステークホルダーに理解してもらうことが難しい。本事業で補助金を利用することで、コストを抑えることができ、PPA導入が加速した。今後も、既存の電力料金+実質再エネ化と同等のコストであれば、追加性のある再エネ化を積極的に検討していきたいという。
また、20年という長期にわたる固定価格の契約については大きなメリットだと考えている。電力にせよ不動産にせよ、第一生命では価格が大きく変動することをリスクとして考えている。長期安定的な再生可能エネルギーの確保ができるオフサイトPPAは、ビジネス上の特性にもフィットしていると考えている。

第一生命保険株式会社「追加性のある再エネ利用は、今後の主流になっていく」と語る堀部長

本事業ならびに再生可能エネルギーに対する今後の展開

オフサイトPPAの発電所のある地域とは、「地域防災態勢の強化」の分野で協業することを次の一手として考えている。既存の第一生命専用の太陽光発電所では、自然災害発生時に地域に非常用電源として電力供給ができる接続コンセントを用意しているところもある。今後、地域の防災所管と協業を検討していきたい。

第一生命保険株式会社2022 年9月に竣工した中層木造オフィス「TD テラス 宇都宮」。国内初の建物新築時からのオフサイトPPAによる電力調達が導入され、地産材を含む木材の利用によって約206トンの二酸化炭素固定効果がある。第一生命ではこのような施設利用者のウェルビーイングを促進する新しいオフィスづくりに取り組んでいる

第一生命グループとしては、事業活動で排出するCO2について、2040年度に実質ゼロ(カーボンニュートラル)を目指している。グループ全体でみると再エネ化が必要な電力のうち、オフサイトPPAが占める割合は現在わずか5%未満。今後の再エネ調達は急務だが、コスト面や事業者との関係も踏まえ、どのようなエネルギーをどう増やすかについては今後も大きな課題だ。
一方、ESGをテーマとする投融資額は2021年度末の約1.3兆円から2024年度末までに2兆円以上に拡大する計画を進めている。2040年までのカーボンニュートラルに向けて、生命保険事業と資産運用の両面で気候変動の取り組みをさらに加速させていく。

カーボンニュートラルの実現に向けたロードマップ(移行計画)カーボンニュートラルの実現に向けたロードマップ(移行計画):第一生命保険株式会社
  • ※1 2019年度比
  • ※2 2019年度比、把握可能で、当社事業や職員の行動変容につながる観点で重視すべき項目が対象
  • ※3 2020年比
  • ※4 2020年度比、保有1単位当たりの温室効果ガス(GHG)排出量(インテンシティ)ベース
  • ※5 2022年3月末時点では累計約5,100億円
  • ※6 The United Nations-convened Net-Zero Asset Owner Alliance。2050年までに運用ポートフォリオのGHG排出量をネットゼロとすることを目指す機関投資家団体
第一生命保険株式会社の実施体制スキーム図図:第一生命保険株式会社の実施体制スキーム図

本事業に関する問い合わせ先

第一生命保険株式会社
  • 担当:堀 雅木様
  • 連絡先:050-3846-2070
  • email:Hori393@daiichilife.com
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