エネ・シード株式会社蓄電池設備・変圧設備
再エネ併設型蓄電池導入レポート

九州のエネルギー供給を支えるため
「出力制御」に蓄電池で挑む

令和6年度エネ・シード株式会社
蓄電池設備・変圧設備

本事業の概要

エネ・シード株式会社今回お話を伺った、エネ・シード株式会社 代表取締役社長 舛本孝文様(中央)、企画開発部長 藤原貴史様(左)、企画開発部副課長 仁島文香様(右)

再生可能エネルギー(以下、再エネ)の導入が進む一方で、出力制御という課題に直面している九州地方。再エネ事業の収益性や持続性が問われる中、その解決策の一つとして注目されているのが蓄電池だ。

九州エリアのエネルギーインフラを担う西部ガスグループで再エネに取り組むエネ・シード株式会社では、既設の太陽光発電所に蓄電池を併設。発電所の価値を最大化し、エネルギーの安定供給に臨んでいる。

エネ・シード株式会社本事業で蓄電池を併設した「エネ・シード長崎第2太陽光発電所」

本事業の導入経緯

エネ・シード株式会社

エネ・シード株式会社は、2012年の固定価格買取制度の開始を契機に、西部ガスホールディングス(当時:西部ガス)の100%子会社として設立された。グループが保有していた工場跡地などの遊休地を活用し、まずは太陽光発電事業を収益事業として立ち上げたのが出発点だ。2026年1月時点で、24カ所合計出力約5.9万kWの再エネ発電所が稼働している(太陽光23カ所:5.5万kW、風力1カ所:0.4万kW)。

設立当初は固定価格買取制度(FIT)の買取価格も高く、事業として成立しやすい環境にあった。2020年ごろからは設立当初と比較するとFITの買取価格は下がっているものの、収益性を見極めながら開発と運営を進めてきた。その後さらに、FIT終了後を見据えた長期運用が課題として浮上してきた。昼間にしか発電できない太陽光を、どのように事業として持続させるのか。そこで検討されたのが蓄電池だった

エネ・シード株式会社本事業で導入した蓄電池(エネ・シード長崎第2太陽光発電所;2.2MWh)

蓄電池導入を検討するにあたり、九州という地域特性は大きな要因だった。再エネ比率の高い九州では、需給バランスの調整のために出力制御が頻発している。発電しても売電できない、これは事業を存続する上で非常に大きな問題だ。

この「利用されない電気」の問題を解決し、FIT終了後も長期的に事業性を確保するため、同社は「再生可能エネルギー電源併設型蓄電池導入支援事業」(以下、本事業)を活用した蓄電池の導入を決定した。第1号案件となった「エネ・シード長崎第2太陽光発電所」(0.9MW※DCベース)は、2013年稼働の既設FIT設備をFIPへ転換し、2.2MWhの蓄電池を併設するプロジェクトである。

長崎第2太陽光発電所には、蓄電池設置に適した条件がそろっていた。第1号案件でスモールスタートとなる規模であり、敷地内に蓄電池が設置できるスペースのほか、搬入や施工のためのスペースも十分確保できた

エネ・シード株式会社発電所内には、蓄電池設備一式の搬入・施工に向けたスペースが十分あり、条件がそろっていた

本事業がもたらす導入効果とメリット

エネ・シード株式会社

蓄電池を併設することで、出力制御時の電力をため、需要のある時間帯に放電する。いわゆるタイムシフトによって、発電量を無駄にせず、かつ収益を向上させる運用が可能になる。アグリゲーターの東芝エネルギーシステムズが高度な市場・発電予測を行い、最適運用を担う。

2025年10月25日に蓄電池設備の運用を開始した直後、5日間連続で出力制御が発生した。制御期間内の充電と、市場価格の高い夕方以降の放電を確認している。

本事業における補助金制度のアドバンテージ

本事業における補助金活用は、経費削減を超えた複数のアドバンテージをもたらした。補助金の有無によらず、もとからエネ・シード長崎第2発電所に併設型蓄電池を導入する予定でいたのだが、1/3の補助金を得たことによりイニシャルコストを削減し、事業性が大幅に向上した点は非常に大きい。残りのFIP期間(約8年)での投資回収という現実的な計画が策定可能となった。

今回の展開において、補助事業であることにより得られたメリットは、九州電力送配電との協議が行いやすかった点。補助事業であることから信用度が上がり、理解を得やすく円滑な手続き等につながった

本事業の展開の後、併設型蓄電池事業に関する問い合わせや営業活動を多数受けるようになった。マスコミ等からの取材依頼もきており、反響の大きさを感じている。

本事業における課題・留意点

エネ・シード株式会社

本事業は公募期間が短く、公募要領の読み込みや見積の取得、関係各社との調整には相当な準備が必要だった。約1年前からメーカーやEPC事業者と情報交換を進めていた。補助金ありきではなく、蓄電池導入そのものを前提に検討を進めていたことが、結果として申請対応を可能にした

最大の難関は、一般送配電事業者との系統連系手続きであった。接続検討の申込みから契約承諾を経て系統連系できるまで約10カ月を要し、想定を大幅に上回った。手続きの過程では、認識の齟齬も発生したが、粘り強く協議を重ねて認識をすり合わせ、補助事業期間内の連系に間に合うことができた。

蓄電池メーカーの選定では、初期費用だけでなく納期と長期的な信頼性を重視した。海外製は安価な傾向にあるが、納期が事業期間に間に合わないリスクがあったため、比較的短納期で純国産のGSユアサ製を採用した。

また、GSユアサは九州内にも拠点を持ち、有事の際にいち早く現地へ駆け付け対応する保守体制を備えている点が、長期の運用を見据える上で決定打となった。今回採用した蓄電池は、1台あたり約200kWhという比較的小さい単位で構成する「キャビネットタイプ」で、故障部分だけを交換できる点は柔軟性に優れる

技術面では、既設の太陽光PCS(TMEIC製)と新設の蓄電池PCS(GSユアサ製)を、ローカルEMS(エネルギー管理システム)で高度に制御・連携させる必要があった。ローカルEMSと各メーカー間の通信・制御調整に時間を要したが、関係各社の協力により完遂に至った。今回得た知見は、今後の案件へ活用できると手応えを感じている。

エネ・シード株式会社 蓄電池ならびに変圧設備一式 海が近いため塩害対策を施した

本事業ならびに再生可能エネルギーに対する今後の展開

西部ガスグループでは、「西部ガスグループカーボンニュートラル2050」において、2030年度までに再エネ電源取扱量を20万kWまで拡大することを目指している。他の太陽光発電所4カ所でも蓄電池併設が進行中だ。本プロジェクトでの実績が、後続案件を推進している。

将来的には自社グループでのアグリゲーション業務や系統用蓄電池参入などの展開も視野に入れ、出力制御が常態化する九州において、再エネの最大限活用という課題に挑み続ける。洋上風力、地熱及びバイオマスへの出資や小水力発電所からの電力調達など、太陽光に限らず再エネの普及拡大に向けて取り組むほか、同じくグループ会社である西部ガステクノソリューションではオンサイトPPAによる開発を行っている。

このように再エネ事業への取り組みが増え続ける中で、発電するだけでは十分とは言えない時代に入った。電力をため、つなぎ、適切なタイミングで使う。その一連の仕組みを現場で積み上げていくことが、地域のエネルギーを支える力になる。蓄電池は単なる付帯設備ではなく、再エネを機能させるための不可欠なインフラとして認識が変わりつつある。

九州は再エネに関する課題が早期に顕在化した地域だ。だからこそ、私どものチャレンジが、地域の再エネ活用を次のステージへと押し上げる一歩になると信じている。

エネ・シード株式会社の実施体制スキーム図図:エネ・シード株式会社の実施体制スキーム図

本事業に関する問い合わせ先

エネ・シード株式会社
  • 担当部署:企画開発部
  • 連絡先:092-633-2111
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