株式会社環境資源開発コンサルタント小南西池太陽光発電所は発電出力750kW、水面とフロート上面からの反射光を集光できるよう両面発電パネルを採用している
需要家主導による太陽光発電導入レポート

ため池を活用し環境保護と新エネルギー
開発の両立を目指す

令和3年度補正株式会社
環境資源開発コンサルタント
小南西池太陽光発電所は発電出力750kW、水面とフロート上面からの反射光を集光できるよう両面発電パネルを採用している

本事業の概要

株式会社環境資源開発コンサルタント究極の事業目的を自然環境保護に置く株式会社環境資源開発コンサルタント 金城義栄社長

「今ある自然・生活環境を保全しながら新規エネルギー資源を創出する」。株式会社環境資源開発コンサルタントが創立以来掲げてきた企業理念だ。太陽光発電に注目が集まる中で、水面を活用した発電に将来性を見いだした。土地造成が不要なため開発の環境負荷は低く、ため池の機能自体を損なわずに発電や賃貸料という付加価値を生みだす「ため池発電」に着目し、事業を強化してきた。

本事業により作られた再エネ電気は、伯鳳会グループという公共性の高い病院で活かされており、この点がため池の地権者および地域住民からも高い賛同を得た。既存の農業・養殖業を損なうことなく、さらに発電という新しい価値を付加するビジネスモデルを確立した。

株式会社環境資源開発コンサルタント「ため池発電の魅力は、樹木の伐採がなく造成不要で環境負荷が低い点にある」と語る金城社長

本事業の導入経緯

農業ため池の設計・調査を行う建設コンサルタントとしてキャリアをスタートし、現場調査を通して近畿地方にため池が多く存在することを肌で感じていた。同時に、その水面が「遊んでいる」状況を見て、資源を生み出す資産に変えられないかと思案していた。

その後、太陽光発電が注目され始めたとき、発電場所としてため池の水面が適していると直感した。ため池は造成が不要で、環境負荷を低減しつつ工期も短縮できるからだ。資金力のある大手と同じことをしても淘汰されてしまう、それならば独自性を重視しようと考えた。候補地は自ら足を運んで調査し、各種条件をクリアしたため池のみで開発を進めてきた。

また、環境保全を重視する事業方針から、山を切り拓く開発は環境保護と矛盾していると感じていたこともため池を選んだ理由だ。この点で「顔の見える電気」を掲げる株式会社UPDATERと方針が一致し、伯鳳会グループへの供給事業がスタートした。

本事業がもたらすメリット

水面での発電では、発電設備の水没は回避しなくてはならない。そこで絶対に沈まない架台を自社で開発した。耐久性があり水質汚染の原因とならない食品衛生A基準をクリアした発泡ブロックをフロートに選択、強度を上げるためにメッキ鋼板を用い、紫外線から保護するため上部をボードで覆っている。フロートのサイズを変えることで浮力調整が可能であり、最大1メートルの積雪にも耐えられる。そのため、近年では東北・北陸地域からもお問い合わせをいただく機会が増えた。

株式会社環境資源開発コンサルタント 5メートル四方の架台に反射防止加工済みパネルを東西に8度の傾斜で8枚設置。両面発電を採用した

通常は全て南向きに設置するところを、当社では東西に向かってハの字型に設置している。朝日から夕日まで有効活用でき、かつ北風に煽られにくい。また、水面で冷やされた涼しい風がパネルの間を通りぬけるため、パネルの温度上昇が抑えられ、陸に比べて発電効率が年間約14%向上したことが兵庫県との2013年からの2年間の実証実験で明らかになった。

水面発電はまだ歴史が浅く、生態系への影響が未知数である面は否めない。池の生態系を守るため、あえて間隔を空けて太陽光が水中へ届くように設置している。兵庫県が設定した基準では水面使用率を最大50%までとしているが、当社では40%に留めている。定期的なサンプリング調査を約10年行っており、現在まで水質および生態系に影響は見られない。

株式会社環境資源開発コンサルタント 水没をさけるためキュービクルのみ堤上に設置。パワーコンディショナもフロート上に固定している。災害時は非常用電源として近隣住民が利用可能だ

本事業における補助金制度のアドバンテージ

資材費や人件費に対するコスト削減施策には限界がある。補助金の存在は、競争力のある売電価格設定に不可欠だ。Apple社など、世界に目を向けると再エネ電気使用を条件とする契約が増えており、ビジネス推進のためには再エネ電気を導入せざるを得ない時代になってきた。現実的に受け入れられる価格なら、今後需要は高まっていくだろう。

補助事業に申請する際に留意したいのがスケジュールだ。公募されてから申請に向けた体制を整えていてはタイミングを逃す。小売電気事業者と条件等のすり合わせに時間が必要である上に、系統接続など自社でコントロールできない業務があることを考慮しておく必要がある。当社の場合、公募が出るという前提で準備を進めた。

本事業ならびに再生可能エネルギーに対する今後の展開

ため池発電の認知は、10年前と比較して格段に広がっている。人材不足等でため池管理が難しくなる中、賃貸料をため池管理費に充当できる点も見逃せない。しかし、ため池の所有権を地方自治体が持っていた場合、本事業の条件である8年以上といった長期賃貸契約が難しいケースも多い。農業の発展のためにも自治体には柔軟な対応を希望する。

本事業では、ため池で作られた電気が伯鳳会グループ(病院)へ届けられる。このように社会貢献にもなると説明すると、農業以外で不労収入を得ることに抵抗を感じていた方からも賛同を得ることができた。今後は作った電気がどこに届けられるのか、そのような視点から開発事業が選定される時代になるかもしれない。

ため池発電は池の環境保全にも役立つと証明された事例もある。絶滅危惧種であるオニバスが見られなくなってしまった兵庫県加古郡の六軒屋池から、ため池の維持管理について相談を受けた。専門家との調査の結果、泥の過剰蓄積による発芽不良だと判明した。池を適切に手入れしながらパネルを設置したところ5年ぶりに丸い葉が現れ、人々の目を楽しませている。慎重に環境への影響評価を行いながら、今後はダムや内海への展開を検討している。

株式会社環境資源開発コンサルタント 5年ぶりに現れたオニバスの葉

自然環境を保ちながら、ため池に新しい価値を生む存在としての「ため池太陽光発電」が今後も増えていくと確信している。

株式会社環境資源開発コンサルタントの実施体制スキーム図図:株式会社環境資源開発コンサルタントの実施体制スキーム図

本事業に関する問い合わせ先

株式会社環境資源開発コンサルタント
  • 連絡先:06-6967-9282
  • email:info@ercon.jp
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