社会福祉法人伯鳳会グループ大阪中央病院はその名の通り、大阪の中心部・梅田にある。屋上には太陽光パネルを設置
需要家主導による太陽光発電導入レポート

再生可能エネルギーの導入は
医療業界の責務!
コーポレートPPAで目指す環境経営

令和3年度補正伯鳳会グループ
大阪中央病院はその名の通り、大阪の中心部・梅田にある。屋上には太陽光パネルを設置

本事業の概要

医療・介護において最重要課題は「人命救助」である。CTやMRIといった最新機器は消費電力が非常に大きく、24時間稼働し続ける医療機器も多数ある。病棟は室温を一定の温度・湿度に保つ必要があるなど、高い電力消費は患者の救命・治療のために必須とされ、節電は対極にあると見なされていた。
また、病院は災害時において事業を継続しなくてはならない筆頭施設であり、BCP対策として電気・ガス・水といったライフラインにあえて冗長性を持たせている。

社会福祉法人伯鳳会グループMRI(磁気共鳴画像)
社会福祉法人伯鳳会グループ陽子線加速器
消費電力の高さに加え、検査する数時間前から起動しておく必要があるなど節電対策が取りにくい

本業の保険診療は国によって診療報酬が厳格に制定されており、独自に燃料高騰コストを価格に上乗せできない経営構造だ。電気料金をはじめとして物価上昇トレンドにある中で、他の業種同様に固定費の削減は取り組むべき最優先課題である。医薬品や消耗品はグループ一括購入により単価を下げる工夫をしてきた。同じ発想でエネルギーも一括購入できないかと考えた。

また、再生可能エネルギーを導入したい背景には、医療業ならではの理由もある。化石燃料由来の電力使用は大気汚染や地球温暖化による環境悪化を招き、人々の健康を害する。
医療・介護を通じて健康な暮らしへの寄与をミッションとしていながら化石燃料を使う矛盾は一刻も早く解消したい。

社会福祉法人伯鳳会グループ今回お話を伺った、伯鳳会グループ 広報室室長 櫻井勇介様

そこで伯鳳会グループではLED照明、再生可能マテリアル、電気自動車への転換といった環境負荷の低減へ取り組んだ。「再エネ100宣言 RE Action(アールイー・アクション)」へ2019年10月の設立時より医療機関第一号として参加し、新規事業所への太陽光パネル設置を進めてきた。

社会福祉法人伯鳳会グループ大阪中央病院ロビーには太陽光発電量を表示するパネルが設置されている

本事業の導入経緯と補助金制度のアドバンテージ

伯鳳会の古城理事長には気がかりな点があった。さらなる再生可能エネルギー調達が求められる中、最も簡便な方法である非化石証書によるCO2フリー電力の購入も進めていた。しかし、仕組みとしては理解できるが、電力という目に見えないものである以上、本当に再生可能エネルギーによって発電された電力が調達されるのか不明瞭だ。農作物のように、エネルギーにもトレーサビリティ(いつ、どこで、どの事業者が発電した電力かが分かる仕組み)が欲しい。

その疑問を解消したのが、いわば電力の直接購入とも言えるオフサイトPPAである。今回の小売電気事業者である株式会社UPDATER(旧みんな電力、以下 UPDATER)社独自のP2P電力トラッキングシステムにより、発電事業者からの供給量を発電サイト別にモニタリングできる。UPDATERより本事業の紹介を受け、補助金によって初期コストを抑えて発電サイトを新設可能なことも知った。需要家、発電・小売事業者、そして社会に対し「三方よし」のシステムが伯鳳会グループの方針に一致し、理事長主導の下で導入を推し進めた。

本事業がもたらすメリット

社会福祉法人伯鳳会グループ「再エネ導入は医療業界の責務」と話す櫻井氏

2023年4月1日より関西圏15か所の事業所へ約4.7MWの発電所から受給がスタートした。不足分の電力はUPDATERより再生可能エネルギー由来100%の電力が供給される。
オフサイトPPAによって、再エネ電力の安定受給と市場価格に影響を受けない価格の固定という二重の安心を得られた。先にも述べたが、医療業界は燃料高騰コストをサービス価格に転嫁できない。電気料金を固定化することで、先の読めない時代においても経営の見通しが立ちやすくなった。

環境負荷の高い医療業として、伯鳳会グループでは再エネ由来100%電力に対し「プラス2~3円までの電気料金上乗せは社会への責任である」という理念を持っている。現在のところ、電気料金はその範囲内に十分収まっているが、多少の損失を被ったとしても社会に対する責務を果たすことが重要だと考えている。

同時に、電力を大量消費する今日の医療・介護施設においては、節電も重要な課題になっている。電気使用量を前年同月比で90%以下とする目標をグループ全体に通達し、全事業所の電気使用量データを集計している。電気機器の数が増える中で10%以上の電力量削減を継続するために、職員の意識向上に留まらず、照明やエアコン温度を管理する監視システム導入などで節電を積み上げる。

本事業ならびに再生可能エネルギーに対する今後の課題

災害時でも十分まかなえる電力の蓄電が可能なら、再生可能エネルギー100%への転換を検討している。さらなるエネルギーの節約に向け、周辺情報も収集しながら技術革新の到来を待ち望んでいる。

伯鳳会グループのコーポレートPPA導入は、社会への責務の他にも「エネルギー価格上昇による経営悪化を防ぎ、従業員の生活を守る」使命も併せ持つ。黒字経営で地域の医療機関としての持続可能性を保つと共に、毎期利益に応じた賞与を持って従業員還元を図る中で、安定経営および働きに見合う報酬という目的を従業員に理解してもらえれば、節電にもより協力的に取り組んでもらえるものと考える。その観点から、今後は社内広報活動にも力を入れていくつもりだ。

社会福祉法人伯鳳会グループ「医療業界は人材の流動性が高い。安定経営のために良い人材が長く働いてくれる環境が大切だ」と語る櫻井氏
伯鳳会グループの実施体制スキーム図図:伯鳳会グループの実施体制スキーム図

本事業に関する問い合わせ先

伯鳳会グループ
  • 担当:櫻井 勇介 様(広報室 室長、大阪暁明館病院 事務長・法人本部 部長代行)
  • 連絡先:06-6462-0261
  • email:info@gyoumeikan.or.jp
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