
地域とともに暮らしの未来をつくる
「まちの発電所」としてオフサイトPPAを活用

本事業の概要

イオンモールは、「地域とともに『暮らしと未来』をつくる Life Design Developer」を経営理念に掲げている。お客さまとその地域にとってより良い未来の実現と企業の成長、それらの両立を目指している。
当社では環境課題に対して、①脱炭素社会の実現、②サーキュラーモールの実現、③生物多様性の保全を軸とした取り組みを進めている。これらのうち「脱炭素社会の実現」のための手段が再エネの構築だ。そこで自分たちが使う電気は自分たちの地域で作る「エネルギーの自給自足」を目指して「まちの発電所」と名付けた取り組みを加速している。「まちの発電所」とは全国各地の太陽光発電所と直営モールを地域単位でつなぐ取り組みで、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)も含まれる。


全国各地の太陽光発電所と直営モールを地域単位でつなぐ「まちの発電所」。全国約60施設へ約120MWを供給している。
「イオン脱炭素ビジョン2050」を宣言した2018年当時は、CO2ゼロ目標を2050年としていた。その後、政府の「低炭素から脱炭素」という方針転換(2020年)を受けて10年前倒しを決め、現在は2040年CO2ゼロ(RE100達成)を目指している。

現在、自給自足した再生可能エネルギーによるCO2削減について、非化石証書購入等による削減分も合わせ、計画は順調に進んでいる。
今後は2040年までに毎年70〜80MWずつ創エネを積み上げていく計画だ。一方で、事業拡大に伴い必要な電力量は増えていくと予測され、省エネ対策(STEP1)は常に必要だ。
本事業の導入経緯

自分たちが使う電気は自分たちの地域で作る「エネルギーの自給自足」を掲げたものの、オンサイト・オフサイトを問わず、太陽光発電のみでは約3割しかまかなえない。店舗の屋上やカーポートに太陽光パネルの設置を進めている。
そこで残り約7割を確保するため、太陽光だけでなく蓄電池の併用、洋上風力、水素など、あらゆる施策の可能性を考慮して進めている。

本事業がもたらすメリット

現状日本ではエネルギーを海外に依存しているが、エネルギーを地産地消へシフトすることが最も安定化を図れると考える。企業の存続には長期にわたって安定な施策を選択した方が理にかなっている。自分たちでエネルギーを作るには当然リスクも伴うが、自らが使う電力を地域内で作り出し、地域に太陽光発電所を設置することで地域の雇用を生み、経済を回すことまでを見通して選択した。
太陽光発電所の選定においても、耕作放棄地など有効活用できる土地を選定している。生物多様性の視点は欠かせない。発電設備も、メガソーラーが造成時に森林伐採など環境への負荷が非常に大きいことを懸念し、中小規模を選択している。このように、時代に応じて判断基準は変わるだろう。
本事業における補助金制度のアドバンテージ

補助金事業の存在は大きい。採択されなかった場合は経済面から判断し、別の選択肢となっていたかもしれない。本事業のおかげで再エネ電源の追加が叶った。
また、補助金は単に経済性だけではなく、国の方針に賛同を示せる機会でもある。補助金が公募されることは、国として取り組みを推進する方針の明示でもある。補助金への申請は、政策に同意して参画することにもつながる。
すでに太陽光発電に適した土地の確保はますます難しくなっていくと考えられる。生物多様性を考慮して候補地を選定していく必要がある。
生物多様性の他、人権面および資源循環面を考慮した製品の調達も厳格化され、選定に要する時間はこの補助金(R4年度補正)を受けたときより増えてくる。また、製品コストや人件費も上昇している。これから先はこの補助金制度のときと同じスケジュール・金額では実施は難しいだろう。
申請から運転開始までを通して、最も懸念したのが系統接続だ。本事業(令和4年度補正)では運転開始の遅延は認められないため、スケジュール内で系統接続が完了できるかどうか、早めに確認が必要だった。
本事業ならびに再生可能エネルギーに対する今後の展開

2040年CO2排出ゼロを目指すため、生物多様性や資源循環などへ配慮しながらあらゆる施策の可能性を掘り起こしている。平面駐車場に路面設置型太陽光パネルを敷設し、発電量や耐久性などの実証実験をスタートした。店舗内に設置できるペロブスカイト太陽電池についても検討中である。
太陽光発電は最も安価な再生可能エネルギーだが、やはり不安定な電源だ。来年度以降は蓄電池を取り入れたいと考えている。夜間のベースロードを確保するため、太陽光発電の電力を蓄電する。
現在はまだ発電-消費のバランスを調整しているが、今後はアグリゲーションシステムが必要になるだろう。
現在は、浮体式洋上風力発電に注視している。日本だけでなくASEAN諸国と共同で安定電源についての可能性もあるかもしれない。


イオンは災害対策基本法に基づき、防災行政上重要な役割を有する指定公共機関の指定を受けるなど、防災拠点としての役割も担っている。内閣府とも協定を締結済である。
2019年に発生した台風15号では千葉で大規模停電が発生した。イオンモール木更津の駐車場には、全国から電力会社が集まり復旧作業の拠点となった。当社施設の受電は特別高圧が多く、停電リスクは低いが、太陽光発電や蓄電池は、有事の際のエネルギー強靱化にも強く期待できる。
これまでに述べた施策は全てお客さまの未来のためである。「自分たちのまちはすばらしいまちなんだ」と感じていただけるよう、お客さまとともに地域の環境課題を解決し、地域住民の幸せに貢献していくのがイオンモールとしてのあるべき姿だ。

本事業に関する問い合わせ先
- イオンモール株式会社
- 担当部署:戦略統括部 地域サステナビリティ推進部