九電みらいエナジー株式会社左:屋根設置型の粕屋ソーラー発電所 右:工場跡地を活用した地上設置型の門司風師ソーラー発電所
需要家主導による太陽光発電導入レポート

地域資源を未来の価値へ-
「再エネ先進地」九州が導く脱炭素の最前線

令和6年度九電みらいエナジー株式会社
左:屋根設置型の粕屋ソーラー発電所 右:工場跡地を活用した地上設置型の門司風師ソーラー発電所

本事業の概要

今回お話を伺った、九電みらいエナジー株式会社 第2事業本部 太陽光事業部 部長 田中 義人様(中央左)、次長 江口 大輔様(中央右)、課長 島津 大様(左端)、副長 竹谷 泰信様(右端)。いずれも肩書き等は取材日のもの。

九電みらいエナジー株式会社は、100年以上前から、恵まれた九州の自然を生かした発電事業に取り組んできた九州電力グループ(以下、九電グループ)で、再生可能エネルギー(以下、再エネ)に特化したプロフェッショナル集団だ。太陽光のみならず、水力、風力、地熱、バイオマスを含む「再エネ主要5電源」の開発・運用を手がける国内唯一の再エネ事業者として、初期の土地探しから、設計、建設、保守・運用、電気の販売までを一貫して自社で行う。

本事業では、主に製造業や物流業などの需要家に向けて、物流倉庫などの屋根を活用してオフィスビル等へ電力を供給する「屋根設置型」と、工場跡地などの未利用地を活用し、複数の拠点へ電力を供給する「地上設置型」の開発を展開した。

上段は、物流倉庫の屋根を活用した屋根設置型、下段は工場跡地を活用した地上設置型。多くの実績ノウハウをもとに、建物や土地の状況に応じて柔軟に設置する。いずれも、系統を通じて遠方の需要地へ電気を送るオフサイトPPAで運用し、通常の物流倉庫で起きがちな、電力消費と発電量が乖離する課題を解消する。

本事業導入の経緯

九電グループは全体目標として、再エネ開発および電化を推進し「カーボンマイナス」の早期実現を挙げている。「九州は自然資源に恵まれていることもあり、再エネ開発が比較的早期に進んできた。これは脱炭素の点からは望ましいことだが、太陽光の大量導入による電力市場への影響は大きく、事業として再エネをいかに推進するかが問われている」(田中部長)

そもそも九州エリアは相対的に電力価格が安価な傾向にある。また、再エネ発電の出力制御も多く行われるため、発電事業者にとっては厳しい市場環境だ。このため、現行の電気料金と比較して合意に至る価格を提示することが大きな壁となっていた。

また、環境配慮も含めた地元との共生は不可欠であること、山林を切り拓くようなメガソーラー開発は高コストになることから、太陽光パネル設置の適地不足は大きな課題。そのような状況下で、未利用地の活用は大きな一手となる。大規模開発に伴う造成工事を伴わないため、売電価格の低減、さらには環境保護の観点からも好ましい。

カーボンニュートラルへの取り組みや、自社の未利用地を有効活用したいという企業の強い再エネ調達ニーズは確実に存在した。そこで顧客の課題を解決し、かつ再エネ電力の調達に踏み切れる価格水準を実現するために、本補助金の活用に至った。

本事業がもたらすメリット

当社の強みである豊富な再エネ開発実績に基づいた、需要家の状況に応じた柔軟なソリューションの提供と、徹底したコスト削減の実現が可能である。

当社は専門のエンジニアを擁しており、機能を維持しつつコストを最適化する「VE/CD(バリューエンジニアリング/コストダウン)」を推進している。 設計段階から工事施工会社と議論を重ね、太陽光パネルとパワーコンディショナーの最適な組合せや、回路構成の検証などのシミュレーションを行い、発電量を最大化する取り組みや、トランス台数の最適化やパネル等の部材の一括大量発注等により、品質と安全性を担保しながらコストを抑える取り組みを行っている。

地上設置型においては、土地の形状等を踏まえ、掘削を最小限とする工夫を行い、最適なパネルの配置等を検討し、土地の有効活用を実現した。

地上設置型太陽光発電の推進に携わる島津課長。「ある程度の面積があれば設置のご提案ができる。維持管理を含めた運用ノウハウも豊富に持っている。ぜひ工場跡などの未利用地の活用を積極的に考えていただきたい」

屋根設置型においては、物流倉庫の稼働を止めることなく施工を実施した。近年では24時間稼働し続ける倉庫も珍しくはない。営業を妨げない緻密なスケジュール管理と安全対策を徹底し、倉庫稼働への影響を最小限に抑えた。お客さまからは、太陽光パネルを屋根に設置することによる「遮熱効果」で、建物内の空調コスト削減という副次的なメリットに期待する声も聞かれた。

屋根設置型の太陽光発電の推進に携わる竹谷副長。「工場や倉庫など広い面積をもつ建屋は太陽光発電に適しているものが多い。緻密なスケジュール管理と安全対策を行うことで、トラックの出入りやテナントの営業を止めずに施工ができた。遮熱効果による省エネにつながるなど副次効果も高く、本事業のあと、問い合わせも増えている」

本事業における補助金制度のアドバンテージ

本事業において、補助金は太陽光設備導入に対し最大のハードルである、コストの壁を突破するために極めて強力な手段となった。前述の通り、九州エリア特有の事情から、需要家が求める電気料金水準と発電事業者の採算性を両立させることは困難を極める。しかし、補助金を活用して初期費用を抑えることで、需要家の価格目線に合わせた提案が可能となった。

さらに、本事業はオフサイトPPAだからこそ開発が可能になった好例でもある。一般的に屋根にパネルを設置する場合、その建物自身で電気を使う「オンサイトPPA」が主流だ。しかし、冷凍冷蔵倉庫などのように電気を大量に消費するならば効率的だが、通常の物流倉庫では電力消費が発電量に見合わず、オーバースペックとなってしまう。

こうした課題に対しては、今回のように、倉庫の屋根に太陽光発電設備を設置し、系統を通じて遠方の需要地へ電気を送る「オフサイトPPA」のスキームが有効な解決策となる。

「補助金という国からの力強い後押しがあったからこそ、現行の電気料金と比較しても納得いただける条件が提示でき、お客さまの脱炭素化を前進させることができた」と語る江口次長。

本事業ならびに再生可能エネルギーに対する今後の展開

さらなる再エネの普及拡大と、限られたスペースでの発電効率の最大化に向けて、当社は新たな発電技術にも積極的に挑み続けている。

太陽光では、薄膜型・タンデム型といった次世代太陽光の実用化に強い関心を寄せている。2025年12月からは福岡空港でカルコパイライト太陽電池の実証実験も行った。1平方メートルあたり0.8kgと非常に軽く(従来のシリコン型の約20分の1)、建物の耐荷重不足により屋根へのパネル設置を断念せざるを得ないようなケースに対し、設置場所の拡大が期待できる。

カルコパイライト実証実験写真福岡空港で行われている「薄い・軽い・曲げられる」等の特徴をもつ次世代型太陽電池(カルコパイライト太陽電池)の実証実験で、屋根への取り付け作業のようす。

太陽光のほか、地域のポテンシャルを活かした開発も進めている。福岡県北九州市若松区沖の響灘(ひびきなだ)に、国内最大のウインドファームを設置した。1基あたり9.6MWの大型風車を25基設置し、合計出力は22万kWに達する。これは国内の洋上風力発電の約4割(出力ベース)にあたる。年間発電量は約5億kWhを見込んでおり、一般家庭約17万世帯分(北九州市の世帯数の約4割)の年間消費電力量に相当する。

ひびきウインドエナジー 九電みらいエナジーをはじめ5社が共同出資し建設を進めた「北九州響灘洋上ウインドファーム」。営業運転開始(2026年3月2日)時点では国内最大の洋上風力発電所で、北九州市沖の響灘に、25基の大型風車が設置されている。(写真提供:ひびきウインドエナジー株式会社)

今後も、九州の豊かな自然資源を背景に、多角的な再エネポートフォリオを有する強みと高度なエンジニアリング力を掛け合わせ、再エネの主要5電源(太陽光、水力、地熱、バイオマス、陸上・洋上風力)の開発を進める。例えば太陽光ならば、適地が減少する中で、前述のカルコパイライトなど新技術を活用し、未利用地や屋根、壁などのスペースを有効活用した設置、既存のパネルへのリプレースなども目論む。

また、九州エリアの系統連系の制限に伴う出力制御といった課題に対応し、再エネ需要の創出および、需要家へ必要なタイミングで必要な量の再エネ電力を供給するため、蓄電池事業にも取り組んでいる。自社のみならず他社電源も含め、蓄電池を活用したアグリゲーションビジネスや、電力市場でのトレーディングの高度化も視野に入れる。さらにPPA顧客のニーズに的確に、柔軟に再エネソリューションで対応するなど新たなビジネスモデルに取組み、再エネの価値最大化を図る。

九電グループは昨年、2035年をターゲットにした、新経営ビジョンを公表した。そのうち、再エネ事業が目指す2035年のありたい姿は「グローバルに再エネのみらいを拓く、日本最大のグリーンエネルギープラットフォーマー」だ。みらいを拓く、再エネプロフェッショナル集団の歩みは止まらない。

再エネの主要5電源の発電所を約8万個のレゴブロックで表したジオラマを前に。「ジオラマのコンセプトは、当社の企業理念でもある『自然の力で輝くみらいへ』。ここには、主要再エネ5電源の事業展開により地域産業の裾野も広げる『地域共生』も込めている。ジオラマはイベントにも出展し、『みらい』を担う子どもたちにも楽しく再エネを理解してもらえている」(田中部長)
九電みらいエナジー株式会社の実施体制スキーム図図:九電みらいエナジー株式会社の実施体制スキーム図

本事業に関する問い合わせ先

九電みらいエナジー株式会社
  • 担当部門:九電みらいエナジー株式会社 第2事業本部 太陽光事業部
  • email:taiyoukoujigyoubu@q-mirai.co.jp
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