森ビル桐生市新里町営農型太陽光発電所 サツマイモ(紅はるか)を栽培中
営農型太陽光発電で実現する、
都市と地域の新しい循環
本事業の概要
今回お話を伺った、森ビル株式会社 都市開発事業部 計画企画部 環境推進部 課長 兼 サステナビリティ委員会事務局 宮臺信一郎 様当社では、2030年までに事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギー(以下、再エネ)とする目標を掲げている。その中核戦略として取り組んでいるのが、主に北関東の耕作放棄や相続問題等を抱えた農地を活用した「営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)」によるオフサイトPPAだ。
単なる再エネ調達にとどまらず、都市の需要家が地域と共生し、エネルギーと作物の両面で循環を生み出す、次世代の再エネプロジェクトとして力を入れている。
当社の環境への取り組みは、1986年の「アークヒルズ」(東京都港区)の開発にまで遡る。Vertical Garden City(立体緑園都市)という理想を掲げ、建物の高層化によって生み出された足元の広大なスペースを緑化し、エネルギー利用の合理化、資源循環などを通じた都市の低炭素化を推進してきた。2024年には、それらの取り組みの最新型でもある麻布台ヒルズにおいて、第1回脱炭素都市づくり大賞(国交大臣賞)も受賞した。都市と自然の共生という長年の思想が、今回の再エネ開発プロジェクトの根底にもある。
現時点で国内電力需要の約8割を実質再エネ電力に切り替え済みだ(2025年2月時点)。しかし、その多くは証書を活用したものであり、将来的な調達リスクや価格高騰リスクを見据え、自ら再エネ電源を開発・所有し、自らその電力を使用する新たなフェーズへの転換を決断した。
再エネを増やしていく追加性への貢献と、中長期的なリスク管理・価格安定化を図ることが、今回の自社開発の大きな背景だ。発電した電力は小売電気事業者を介し、都心ビルへ供給する。
本事業の導入経緯
「『エネルギーまで循環する街を作りたい』と入社時から描いていた夢が、20年越しに実現しつつある」と語る宮臺氏再エネ開発においては、地域との共生を最優先に考えている。これは、当社の都市再開発の理念に通底するものがある。日本の国土の約7割が森林である中、再エネ開発を進めようとすると森林伐採を伴うケースが増えてくる。環境保全と再エネ開発が共生する道を探り、たどり着いたのが、農業と発電を両立させる「営農型太陽光発電」だった。森林を伐採しないだけでなく、後継者不足による耕作放棄地の増加や食料自給率の低下という社会的課題の解決にもつながり、ひいては地域と都心とを結びつけることもできると考えた。
たくさんの情報交換や商談を重ねる中、株式会社エコ革と出会い、営農型太陽光発電の実現へ大きく前進した。エコ革は太陽光発電開発の会社というだけでなく、子会社に農業法人「株式会社エコ革ファーム」を持ち、営農実績を併せ持っていた。地域に根差した太陽光発電開発事業と、本格的な農業経営を行うプロフェッショナルとしての姿勢に共感し、パートナーとして手を携える決め手となった。
株式会社エコ革のみなさん営農型の課題は、パネル下でどの作物を栽培すべきか知見がまだ少ない点にある。実際、当社が本プロジェクトの前に挑戦した事例でも、集中豪雨による冠水など想定外の事態に見舞われたこともあり、その土地の傾向やパネル設置による影響を正しく判断する必要があった。
発電量の最大化だけを考え、パネルを目いっぱい敷き詰めてはならないのが営農型の留意すべき点だ。日照量を確保するため、過去の経験に基づき遮光率を30〜40%弱に抑えた設計としている。農地の一時転用許可は3年ごとの更新で、周辺の農地の8割程度の収穫量を維持することなどが求められるためだ。
エコ革ファームは、その地域を管轄する農業委員会と定期的に意見交換をしたり、鹿児島県から熟練の農家を招致するなど妥協のない取り組みを行いながら、サツマイモをはじめとした各種農作物の栽培に成功している。
エコ革ファームで営農を実施している片平さんご一家。はるばる鹿児島から移住してきてくれた。現在は、更なる収穫量や品質の向上と、農地、農作物を起点としたイベント、地域と都心との連携を、当社と共に図っている。
サツマイモの収穫体験にて。豊かな土壌で丸々とした作物が実り、収穫の手応えに笑顔があふれる。本事業がもたらすメリット
本事業は、多方面にメリットをもたらしていると考える。発電サイト周辺住民に対しては、耕作放棄地の再生に加え、各発電所には停電時に自治体の判断の下で地域住民が利用できる「防災電源」を供給する。現在開発を進めている栃木市の太陽光発電所の開発においては、自治体所有のポータブルバッテリーを何度も充電することができる拠点としても機能し、地域のレジリエンス向上に寄与している。
農業への相乗効果も見逃せない。近年、かつてない猛暑に見舞われる中で農作業の苛酷さや作物への影響も課題になっている。営農型では、猛暑下においてパネルが適度な日陰を作ることで、農作業の負担軽減や作物の日焼け防止につながるという当初想定しなかった効果も出ている。
収穫した作物を都心のヒルズで開催されるマルシェで販売する準備も行っており、都市住民や子どもたちへの環境教育や「電気と作物の都心・地域循環」という新しい価値を提供する。単なる再エネの調達先として地域を見るのではなく、収穫体験を通じた交流を生み出すことで、都市と地域の新しい循環を目指している。
収穫体験イベントに参加したみなさん。大地の恵みと再エネが自然な形でつながり、都心と地域の循環が楽しい体験として伝わっていく。本事業における補助金制度のアドバンテージ
補助金の活用は、本スキームの実現に不可欠だ。本プロジェクトでは、大型トラクターが走行できるようパネル高を約3mに設定。通常の太陽光に比べ架台コスト等が高くなるが、補助金によって初期投資を抑えられた。
また、多くの権利者と共に開発を進め、住宅用途も含む都市型複合施設では、再エネ導入においても電気料金の安定性や社会的受容性が不可欠となる。本事業は、再エネ電力を生活インフラとして無理なく組み込むための制度的後押しとなり、環境価値と経済性の両立を可能にした。
系統連系の遅延といった予測困難な事態に対しては、JPEA(太陽光発電協会)と緊密に連携・相談することで、誠実な進捗管理と事業完了を実現した。
高さ3mの架台で展開される太陽光パネル。その下をトラクターが悠々と作業する。過酷な夏の日差しをやわらげてくれる効果もある。本事業ならびに再生可能エネルギーに対する今後の展開
森ビルは2030年までに事業活動で使用する電力を100%再エネ化する目標を掲げている。本事業で得た知見を活かし、再エネ戦略をさらに加速させていく。太陽光の弱点である夜間や雨天時の供給を安定させるため、国内メーカー製の蓄電池を併設した太陽光発電所の開発も進めている。青森県で陸上風力発電も開発中だ。太陽光と風力、そして蓄電池を組み合わせ、需要に合わせた最適な電源ポートフォリオの構築を目指している。
さらに、各地に分散した電源や蓄電池をネットワークで結び、需要ビル側にあるコジェネといった発電設備やテナントを含めたデマンドコントロールも含め、全体を一つの発電所のように制御する広域VPP(バーチャルパワープラント)構想も進行中だ。単に省エネを図る、単に発電所を作る、というだけでなく、あらゆる技術を駆使して脱炭素というゴールへ挑み続ける。

自治体の悩みに寄り添い、雇用創出や里山保全のような社会課題の解決と、持続可能な再エネ拡大を同時に成し遂げるのが森ビル流の再エネ開発だ。都市の繁栄は、地域の豊かさと共にある。単なるエネルギーの調達にとどまらず、地方の課題を共に解決し、互いに支え合うパートナーとして、都市と地域の新しい循環モデルを社会に提示し続けていきたい。

本事業に関する問い合わせ先
- 森ビル株式会社
- 担当部門:環境推進部
- 連絡先:03-6406-6684
- email:kankyo@mori.co.jp

