需要家(企業)が抱える課題を補助事業で解決! 再エネ・太陽光発電 電気購入の新たな手法

図とデータでわかる 再エネ・太陽光発電導入

どうして脱炭素経営には再エネ活用が必要なの?

地球温暖化が進み、企業は脱炭素経営が求められています。その実現には再エネの活用が不可欠です。
地球の現状とともに、再エネ活用の必要性を紹介します。

取り組む企業が増加中! 今、注目の脱炭素経営ってなに?

脱炭素。これは地球温暖化の原因となるCO₂(二酸化炭素)などの温室効果ガスの排出量をゼロにするために、石油や石炭などの燃焼によりCO₂を発生する化石燃料などから脱却することを指します。そして、温室効果ガス排出量を実質ゼロにした状態をカーボンニュートラルといいます。太陽光をはじめとした再生可能エネルギーの利用を推し進め、脱炭素が実現した結果もたらされるのが、持続可能な脱炭素社会です。

脱炭素経営とは、脱炭素化を目標として定めた事業方針をもとに行う、企業経営の手法です。従来は、企業の脱炭素化や気候変動対策は、努力目標のような位置づけでCSR(企業の社会的責任)活動の一環として行われてきました。しかし近年では、経営上の重要課題と捉え、脱炭素に全社を挙げて取り組む企業が増えています。

地球温暖化でどんな影響が出ている?

日本では甚大な水害が増加!

「世界平均気温(2011~2020年)は、工業化前と比べて約1.09℃上昇」
「陸域では海面付近よりも1.4~1.7倍の速度で気温が上昇」
「北極圏では世界平均の約2倍の速度で気温が上昇」
「強い台風(強い熱帯低気圧)の発生割合は過去40年間で増加」
こういった極端な気象現象が、世界各地に影響を及ぼしています。

日本では近年、35℃を超える猛暑日が急増※1。その結果、熱中症による救急搬送※2や死亡者※3が増加傾向にあります。また、高温による農作物の品質や収量の低下、水産物の漁獲量の減少なども海水温の上昇などが原因といわれています。さらに懸念されるのが、豪雨の増加や台風の強大化です。2017年の「九州北部豪雨」をはじめ、強雨・大雨の増加に伴い、土砂災害や水害の発生頻度も右肩上がりの状態です。

※1 参照:気象庁「全国(13地点平均)の猛暑日の年間日数
※2 参照:総務省消防庁「令和5年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況
※3 参照:厚生労働省「年齢(5歳階級)別にみた熱中症による死亡数の年次推移(平成7年~令和2年)人口動態統計(確定数)より」

地球温暖化で国が消滅する!?

世界に目を向けると、気温上昇に伴い、北極海の海氷の減少や海面水位の上昇、生態系への影響が深刻化しています。また、近年たびたび発生する大規模な森林火災も、地球温暖化が引き金になったといわれています。

もっと深刻なのは、ツバルやチャゴス諸島、マーシャル諸島といった、海面水位上昇の影響を受ける島国です。特にツバルは、国内で最も標高が高い場所でも海抜5mに満たない状況であり、地球温暖化によって国が水没し、消滅する危機に直面しています。

地球温暖化の原因とされるCO₂などの温室効果ガスの排出量を減らす意味でも、脱炭素の電源や再生可能エネルギーの活用が求められています。

COP21で世界共通の長期目標を設定! その内容とは?

温室効果ガスを実質ゼロに!

地球温暖化を食い止めるには、その要因となるCO₂などの温室効果ガスを減らすことが必要です。

温室効果ガスの対応について、世界規模での取り組みの指針となっているのが、「パリ協定」です。2015年のCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で、197の国と地域が参加し採択。世界共通の長期目標が設定されました。おもには「世界の気温上昇を2℃より低く抑える」「21世紀後半に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」で、2020年から始動。主要排出国を含むすべての参加国は、削減目標を5年ごとに提出・更新する義務があります。

「京都議定書」からバトンタッチ!

パリ協定以前の国際的ルールに、「京都議定書」があります。2013年から2020年までの温室効果ガスの削減目標を定めたもので、パリ協定は京都議定書からバトンタッチする形でスタートしました。京都議定書が、先進国のみを対象にした一方で、パリ協定は途上国も参加したことにより、世界中が脱炭素社会への実現に向けて動き出しました。

COP21での日本の目標は? 達成度は?

パリ協定では、世界の主要国が温室効果ガスの削減目標を定められました。

日本は、2030 年度に温室効果ガスを2013 年比で46 %削減する約束草案を提出。同時に「今世紀中頃に向けた目標」として、2050年までに排出量を実質ゼロにすることを掲げており、どちらも他の国と比べて遜色(そんしょく)のない、高い目標です。

これまでの達成度ですが、2013年度の水準と比較して2016年度は7.3%の削減実績、2018年度は12.0%の削減実績を上げており※4、目標ラインと同水準で進んでいます。

※4 参照:環境省「2016年度(平成28年度)の温室効果ガス排出量(確報値)」「2018年度(平成30年度)の温室効果ガス排出量(確報値)」

脱炭素社会に必要な再エネ! 日本はどうなの?

日本の主な再エネは5つ!

再生可能エネルギーは、パリ協定で掲げた目標を達成するためには不可欠なものです。

主な再エネとして、水力、太陽光、風力、地熱、バイオマス※5があります。これらは温室効果ガスを排出しないだけでなく、日本国内で生産できることから、重要な低炭素の国産エネルギー源として注目されています。

※5:バイオマスを使用すれば、温室効果ガスを排出しますが、温室効果ガスを吸収して成長する木材などを材料として使っていることから、全体で見れば大気中の温室効果ガスの量には影響を与えにくいエネルギーです

各再エネ(発電方法)の特徴

水力
高低差を利用し、水を落として水車を回すことで発電。
太陽光
太陽の光エネルギーを太陽電池により直接電気に変換する発電方法。
風力
風のエネルギーで風車を回して発電する方法。
地熱
地球内部から取り出した蒸気や熱水でタービンを回して発電する方法。
バイオマス
生物資源を「直接燃焼」「ガス化」して発電。

再エネなくして目標達成は不可能!?

日本の再エネの活用は、全体の2割程度(20.3%)にとどまっています(2021年度時点)。

この比率を2030年には36〜38%に上げなければ、「パリ協定」の目標達成、脱炭素社会の実現が難しい状況にあります。そして今、数ある再エネの中でも、導入・活用が進んでいるのが太陽光発電です。

再エネ活用で企業の好感度がアップ!

取り組みが企業価値につながる!

脱炭素に向かう社会情勢から、脱炭素を企業経営に取り込み、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーの導入・活用が進んでいます。

企業が再エネを導入するメリットはいくつかあります。まず、昨今の電気料金の値上がりは再エネ導入を後押しする要因です。一方、取り組みの有無が、企業の評価を左右する状況も生まれています。再エネ導入をPRすることで、対外的な評価が高まり、商品・サービスの販売促進につながる、または新たなビジネスを生み出すきっかけにもなっています。

同時に、再エネは投資の対象としても注目されています。環境・社会・企業統治の観点から企業を選別して投資する「ESG投資」では、環境への配慮が企業価値の一つとされ、脱炭素経営は投資家にとって投資する企業を選ぶうえで重要なポイントになっています。

脱炭素経営は大企業だけの課題ではない!

再エネを積極的に活用する企業であることを示す指標として、「RE100」「再エネ100宣言RE Action」「SBT」「TCFD」があります。

「RE100」は事業活動で使用する電力を100%再エネで賄うことを目標として創設されたプロジェクトです。世界の環境先進企業を中心に、加盟企業数が増えています。「再エネ100宣言RE Action」は、「RE100」の加盟条件を満たさない企業が参加する目的で設立。最大の違いは使用電力量が少なくても、加盟できるという点です。

「SBT」とは、「パリ協定」が求める水準に整合した、5~15年先を目標として企業が設定する温室効果ガスの排出削減目標です。また、「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」は、各企業に気候変動に対しての取り組み計画や現状を、具体的に開示することを推奨する国際的な組織です。「TCFD」を通じて情報を開示することで、企業が抱える気候変動関連のリスクが見えるほか、投資家の評価、判断基準にもつながります。

地球温暖化が進行する中で、企業の脱炭素経営に向けた動きが加速しています。脱炭素経営は、あらゆる企業にとっての共通かつ喫緊の課題です。地球温暖化の現状や対策、さらには再エネなどに対する正しい知識と認識を持ち、自社にとって最適な脱炭素経営のあり方、手法を検討していく必要があります。

今、太陽光発電が注目されている理由とは?

再エネ発電の中でも特に注目を集めているのが太陽光発電です。補助事業を使えば発電設備の投資費用がかからない、大量の再エネ電気が手に入るなどの恩恵が受けられます。

企業で発電設備を造り電気を使う時代がやってきた!

地球規模で進む温暖化は、まだ終息する気配を見せていません。その原因となるCO₂などの温室効果ガスの排出を防ぐために、政府は脱炭素社会の実現を目指して様々な施策を講じています。その方針を受け、企業もエネルギーの脱炭素に貢献すべくいろいろなことに取り組んでおり、今回取り上げる太陽光発電の導入もその一つです。

中には、自社の敷地内に太陽光パネルを設置して、使用電力の一部を賄っている企業の事例も出てきています。例えば、3MW規模の太陽光発電設備の電気を用いて、年間5000MWhを置き換えることができれば、約2000tのCO₂を削減することができます。これは、25mプールの約2400杯分に相当。このように太陽光発電の導入は、脱炭素に大きく貢献できる非常に有効な取り組みであることが分かります。

遠く離れた場所にも太陽光発電設備が造れる! その仕組みは?

自社に敷地がなくても導入可能!

国土面積が大きくない日本では、「自社の敷地内に太陽光パネルを置くスペースはない」というケースも多くあります。しかし、実はそうした企業でも再生可能エネルギーを導入できる手段がいくつか存在することをご存じでしょうか。中でも注目を集めているのが、太陽光発電設備を需要家(企業)の敷地外に新設し、その電気を小売電気事業者から購入するという方法です。

継続的に取り組める有効策!

これは、自社から離れた農地の耕作放棄地や、自治体や個人が所有する遊休地といった場所に、発電事業者を通じて太陽光発電設備を設置し、小売電気事業者から購入した電気を自社に供給してもらうという仕組みです。所有するスペースの制約を受けることなく太陽光発電を導入できるため、脱炭素を継続的に取り組んでいくうえでも効果的な方法として期待されています。

遠隔地に太陽光発電設備の導入が注目される理由は?

自社から離れた場所に太陽光発電設備を設置し、そこから電力の供給を受ける手法に注目が集まっているのには、いくつかの理由があります。

企業にとって大きなメリットである「設備投資費用が要らない」「大量の再エネ電気が手に入る」「電気料金が安定」について、それぞれ紹介していきます。

注目① 設備投資費用が要らない

太陽光発電の導入を継続的な取り組みにしていくうえで、気になるのは設備投資にかかる費用です。しかし、発電事業者が太陽光発電設備を設置し、その投資回収を売電額から行うので、需要家は電気料金を支払うことで太陽光発電による電気を利用できます。なるべく設備投資を抑えながら、脱炭素に貢献したい企業にはうれしいポイントです。

さらに、設置した発電所は自社の資産としてもつことはないため、本業への資本効率には影響を与えません。自社の財務面から見たメリットも大きいのです。

注目② 大量の再エネ電気が手に入る

自社の敷地外に太陽光発電設備を設けることができるので、スペースの制約を受けにくい点も特長。発電設備を1か所だけでなく複数の場所に設置でき、大規模な発電設備を用いることも可能になります。発電した電気は複数の事業所に送電できるため、複数の事業所やグループ内の企業でまとめて再生可能エネルギーを使うことが可能です。

注目③ 電気料金が安定

近年、不安定な世界情勢の影響で化石燃料価格が高騰。これに伴い卸電力市場価格が上昇し、一般向けの電気料金も値上がりしています。こうした形で世の中の影響を受けることは、火力発電を主体とする日本の電力市場では避けられない事態といえます。

しかし、太陽光発電はこの限りではありません。先の読めない海外情勢や、エネルギー事情に影響されることのない太陽光をエネルギー源にしているため、電力コストの変動を抑えられるメリットを持ち合わせています。

補助金で国も設置を後押し!

様々なメリットが見込める太陽光発電の導入は、政府も後押ししており、太陽光発電設備の新設に対しては補助金が交付されます。

補助金活用の効果として、発電コストの削減が挙げられます。補助金により発電事業者の売電単価が引き下がることで、需要家(企業)が小売電気事業者から購入する再エネ電気料金へ反映されることが期待できます。

令和3(2021)年度補正予算の補助事業においては、太陽光発電設備の新設に伴う補助金を活用することで、需要家(企業)は追加性のある再エネ電気の活用とともに、燃調費の37%相当額を削減できる状況でした※4。燃調費(燃料調整費)とは、電気料金の算出項目の一つで、火力燃料の原材料価格の変化に応じて上下する金額を指します。この補助事業における再エネ電気は、火力燃料を使わないので燃調費は料金に含まれません。

再生可能エネルギーとして、注目されている太陽光発電。脱炭素に貢献できるだけでなく、自社の敷地を必要としない、手厚い補助金があるなど、様々なメリットがあり、企業の再エネ対策の有効な手法として非常に期待されています。

※4参照:太陽光発電協会「需要家主導による太陽光発電導入促進に関する調査 報告書」(2023年3月)

太陽光発電導入による企業のメリットって?

太陽光発電設備を新設する企業に対して、国は補助金の支援を行っています。太陽光発電の導入は、価格が安定しているなどコスト上でのメリット以外に、社外へのアピールの材料にもなります。

太陽光発電の導入を国が補助金でアシスト!

政府が策定した2030年の長期エネルギー需給見通しや、温室効果ガス削減目標を実現するためには、再生可能エネルギーのさらなる普及が不可欠です。なかでも、需要家である企業が太陽光発電を導入することで得られる効果は、決して小さくありません。

しかし、需要家による太陽光発電の導入はまだまだ道半ばにあるため、経済産業省資源エネルギー庁では太陽光発電の導入に対して補助金で支援を行っています。

補助金は、例えば発電された電気を長期的に利用する契約を結ぶなど、需要家が主体的に発電事業者や小売電気事業者と連携して太陽光発電設備を新設して導入するケースに対して交付されます。令和4年度第2次補正予算での予算額は255億円。期限内に申請を行い、審査・交付決定後に発電設備を新設し、運転開始後に補助対象事業者である発電事業者に補助金が交付されます。

これにより発電事業者の設置費用にかかるコストが抑えられるだけでなく、そのメリットは需要家にも、電気料金で還元されることが期待されています。

他にも、太陽光発電導入による価格メリットがありますので、3つのポイントに分けて紹介していきます。

メリット①設備投資費用がかからない!

新たに太陽光発電を行う発電事業者は、発電設備の新設に伴う設備投資や、設置後の設備のメンテナンスも行います。発電事業者が発電した電気は、小売電気事業者によって需要家に供給されます。これらの費用は、需要家が支払う電気料金の中から賄われます。

このように、発電事業者と小売電気事業者の連携によって、需要家は自ら設備投資をする必要がなく、再生可能エネルギーで作られた電気の供給を受けることができます。

本来であれば、高額になりがちな設備投資の費用。その費用を抑えることができる点は、事業活動で電気を大量に消費する需要家にとって、大きなメリットといえるでしょう。

メリット②財務上の手間がかからない

コストと並んで気になるポイントが、財務にかかる手間の問題です。太陽光発電設備を自社で所有する場合、企業は設備を自社の資産として計上する必要があるため、様々な処理、作業が発生します。

しかし、発電事業者が発電した電気を、小売電気事業者を通して購入する場合には、自社は設備の所有者に当たらないため、資産計上の必要もなく、かかる業務に必要な手間も省くことができます。

監査法人などの専門的な判断が必要な面もありますが、資本効率や償却資産税などの観点から自社で設備を所有することなく、太陽光発電を導入したい企業には適した制度といえます。

メリット③価格が安定! しかも他の再エネより安価!

一般的に、私たちが使う電気は化石燃料から作られ、かつ海外からの輸入に大きく頼っています。そのため、為替を含む様々な要因から価格が変動することが多く、また卸電力市場の影響も受けやすいのが特徴です。

一方、太陽光発電設備で作られる電気は、太陽の光エネルギーを吸収して直接電気に変えるため、燃料価格や輸入に伴う価格の変動がなく、基本的に卸電力市場取引を介さないため、市場価格の影響も受けにくいことから価格が安定しています。

また、「FIT・FIP制度における買取価格」表を比較しても、太陽光発電が安価であることが分かります。

太陽光発電導入で社会へのアピール材料に!

太陽光発電の導入は対外的なアピールにもつながります。

ステークホルダー(利害関係者)に向けて、環境や人権などに関する社会的問題、持続可能な社会への取り組みなどを公開するサステナビリティレポートに、企業が太陽光発電の導入を盛り込む事例がみられます。

また、「追加性がある」再生可能エネルギーを生み出すこともアピールポイントの一つです。追加性とは、新たな再エネ発電設備への投資につながっていることを指します。再エネ発電設備の増加によってCO₂の削減量が増えることは、追加性が強まることを意味します。

追加性は、国際的なイニシアティブ「RE100」でも重視されている指標。「RE100」加盟企業は国内外で増加しており、これに加盟することは自社の脱炭素化への取り組みを社会へアピールする絶好の機会につながります。

企業の気候変動に対する取り組みや、影響に関する情報の開示を奨励する国際的な枠組み「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」も、社外アピールに不可欠な要素です。太陽光発電の導入などTCFDの提言に賛同することで、企業の脱炭素経営が可視化され、企業価値の向上につながります。

再エネ利用で脱炭素経営に貢献できる!

企業が排出する温室効果ガス量の算定や報告に用いられる指標を「温室効果ガス(GHG)プロトコル」といいます。

温室効果ガスプロトコルは、「スコープ1〜3」の3つに区分されます。スコープ1は「事業者自らが直接排出する温室効果ガス」で、自社工場などで排出されるものを指します。スコープ2は、「他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出」です。小売電気事業者などから購入した電気が挙げられます。

太陽光発電で作られた電気を導入することで、スコープ2の間接排出の削減につながり、脱炭素経営に大きく貢献できるといえるでしょう。

地球温暖化を原因とする世界的な気候変動は、終息する気配をいまだに見せていません。設備投資費や財務的な手間を抑えながら始められる太陽光発電による電気を導入し、より持続可能な社会に貢献する事業者を目指してみませんか?

補助事業の公募内容と提携する事業者の選び方は?

補助事業に応募してから補助金が交付されるまで、一定の課題をクリアする必要がありますが、まずは提携先(小売電気事業者・発電事業者)を探すことから始まります。
課題の詳細と提携先の探し方について紹介します。

導入する3つの主なメリットをおさらい!

太陽光発電を導入する上で享受できる3つのメリットを解説します。

メリット① コストも手間も不要!

太陽光発電設備の設置費用は、発電事業者が設備投資をするため、電気を利用するうえでの設備投資を抑えることができます。また、設置した設備は自社の資産に計上する必要がないため、減価償却も不要です。そのため、財務上の手間を削減できるばかりか、税務的なメリットも得られます。

メリット② 大量の再エネ導入!

太陽光発電設備は、自社の敷地外に設置されるため、スペースの制限を受けることなく大規模な設備や、複数の設備を間接的にもつことが可能です。また、複数の事業所に再エネ電気を送電できる点も大きなメリットです。

メリット③ 安価と安定!

輸入に頼る化石燃料の価格は、海外の情勢・エネルギー事情に左右されやすく、高騰することも珍しくありません。しかし、太陽光によるエネルギーは他の再生可能エネルギーに比べて価格が安く、かつ設備があれば国内で調達できるため、不安定な海外情勢に振り回されることなく、価格が安定しやすいのです。

5つの主な要件をおさえましょう

補助事業の補助金を受けるためには、次の5つの要件を満たす必要があります。

要件1|非FIT・非FIPであること

まずはFIT制度(固定価格買取制度)、FIP制度(Feed-in Premium)に該当しないことが要件です。つまり補助金申請の対象となる設備が「電気事業者による再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法の認定計画」に含まれていてはいけません。

要件2|発電設備のスペックが条件を満たしていること

例えば令和5年度予算の場合は、太陽光発電設備のスペックが、合計2MW以上の新設設備であり、なおかつ設備購入費や土地造成費、工事費等の補助対象経費の単価が 23.6万円/kW(AC ベース)未満でなければなりません(蓄電池を併設しない場合)。

※複数地点で新設する設備の合計値も可。ただし、1 地点当たりの設備容量が 30kW 以上(AC ベース)かつ、複数の平均が50kW(AC ベース)以上であること。蓄電池を導入する地点の設備については、15万円 /kW(DCベース) 未満であること。かつ、蓄電池を導入する場合は、蓄電池の単価が19万円/kWh以下であること
※申請時に原則として系統連系に係る接続検討の回答を得ていること
※リース・レンタルによる設備設置は補助対象外

要件3|事業完了日(運転開始日)が条件を満たしていること

例えば令和5年度予算の場合は、令和6(2024)年の2月29日(木)までに運転を開始しなければなりません(詳しくは当該年度の公募要領を確認しましょう)。

要件4|定められた利用期間を守ること

一定量以上の電気を、8年以上にわたって利用する契約などを締結しなければなりません。

※一定量以上とは、導入する太陽光発電設備による発電量の7割以上を利用することを要件とします
※補助対象事業者、小売電気事業者、需要家の間で上記を満たす契約等が締結されること
※需要家は複数であることも可。原則として補助対象事業者・小売電気事業者は1者に限る
※自己託送は補助対象外

要件5|ガイドライン・関係法令を遵守すること

一つの場所において、複数の設備に分割していないこと。また、地域住民と適切なコミュニケーションを図るとともに、地域住民に十分配慮して事業を実施するよう努めることといった、再エネ特措法に基づく「事業計画策定ガイドライン」を遵守しなければなりません。

以上が主な5つの要件です。詳しくは公募されている補助事業の公募要領をご確認ください。これらの要件を満たしていなければ、補助金の対象から外れてしまいますので、入念に確認してください。

蓄電池の活用方法は?

蓄電池は電気を充電し貯めておくための装置です。電力需給ひっ迫時に電気を供給することが補助対象事業の要件における基本的な活用方法ですが、例えば、普段は日中の発電量の約3時間分を蓄電しておき、日が陰り出す16時以降にシフトして供給することも可能です(※令和4年度補正・令和5年度の事例)。

運転開始までのスケジュールは?

補助金交付から、太陽光発電の導入を進めるうえでの大まかなスケジュールをご紹介します。

STEP1|計画開始

まずは需要家が発電事業者、小売電気事業者に対して、事業方針をもとに相談を行います。その後、あがってきた提案内容を吟味・調整しながら計画をまとめ、双方で同意を得られれば需要家・小売電気事業者が発電事業者に対して誓約書を提出します。

STEP2|補助金の交付申請

STEP1でまとめた事業計画をもとに、補助事業の執行団体に補助金交付を申請します。内容に不備がなければ総合的に評価を行い採択事業者が決定され、執行団体から採択・交付決定が通知されます。実際の発注・設備工事が始まるのは、この採択・交付の後になるため、注意してください。

STEP3|設備工事と受電開始

需要家、発電事業者、小売電気事業者の間で契約を締結し、発電事業者が施工業者などへの発注を行います。補助金の請求と入金は、設備工事が完了し、運転開始した後に実施される確定検査を受けた後になりますので、注意が必要です。不採択になった場合の取り決めについても、計画の時点であらかじめ決めておく必要があります。

交付取り消しも! 注意するべきポイント

無事に補助金申請が採択・交付されたとしても、申請内容に虚偽が認められた場合、以下のようなペナルティが科されますので、注意が必要です。

・ 補助金適正化法第17 条第2 項の規定による交付決定の取り消し。
・ 補助金適正化法第29 条から第32 条までの規定による罰則。
・ 相当の期間、補助金などの全部または一部の交付決定を行わないこと。
・ 執行団体 または経済産業省の所管する契約について、一定期間指名などの対象外とすること。
・ 補助事業者などの名称及び不正の内容の公表。

また、補助金の交付決定前に生じた経費は、原則として補助金の対象にはなりませんが、定められた手続きに沿って事前着手の申請を行い、執行団体から交付決定前に承認されれば、補助対象経費になります。

しかし、事前着手の承認が得られたとしても、審査の結果で補助金の応募が不採択になる場合があります。その際は支出済みの経費は一切補償されないため、注意が必要です。

太陽光発電の導入にあたって、ぜひ補助金を受け取りたいところですが、申請には確認すべき点が数多くあります。ここで紹介した事項を中心として、一つひとつの要件をクリアしながら、採択を目指しましょう。

自社に合った事業者と提携する

需要家が補助事業を通じて新たに太陽光発電を導入するためには、自社だけで完結することはできず、以下のような役割を果たす「小売電気事業者」「発電事業者」と提携しなければなりません。

事業者ごとの役割

小売電気事業者は、顧客のために必要な供給能力を確保し、電気を供給する役割を担います。一方、発電事業者は、契約に基づき燃料確保と確実な発電を行います。

こうした事業者は地域ごとに数多く存在します。その中から、自社の方針・計画に合った事業者と契約することが重要です。

補助金は発電事業者へ

太陽光発電の新たな導入を促進する「需要家主導太陽光発電導入促進事業」の補助金の対象は、需要家や小売電気事業者ではなく、「特定の需要家に電気を供給するために新たに太陽光発電設備を設置・所有する者」=発電事業者であることにも注意が必要です。

提携する事業者をどうやって選ぶ?

太陽光発電を導入するために各事業者と提携するにあたっては、自社の方針や実績によって、選定すべき事業者も変わります。

CASE1. 自社の方針や計画が明確な場合

自社に小売電気事業者としての経験やノウハウがある場合は、自社主導で協議し、コストや発電の安定性、地域性といった条件を検討し、事業者を決定できます。また、ESG投資を兼ねて再エネに貢献する事業者と提携する事例も見られます。

CASE2. 実績がなく、方針も未定の場合

これまで導入の実績がなく、方針も未定の場合は、地元で信頼される事業者と提携することも有効な手段です。また、事業者から再エネがきちんと供給されているかが不安な場合は、供給量をモニタリングできる技術を提供できる事業者と提携する方法もあります。

CASE3. 金融機関から提言された場合

取引先の金融機関から導入を提言される場合もあり得ます。この場合、方針や計画内容について、金融機関と念入りに意見や方針をすり合わせたうえで進めましょう。また金融機関は業務の特性上、各事業者の強みや信頼性を把握していることも多いため、事業者選定にあたって頼もしい存在となり得ます。

事業者選びの5つのポイント

提携する事業者を決定する際のポイントは、図のように5つあります。事業者の実績や具体的な契約条件は誰もが思い浮かべるポイントですが、契約期間が長期にわたることを見越して、そのほかの点に注意を払う必要があります。その3つのポイントを紹介していきます。

見落としがちな3つのポイント

設備の特色

発電事業者の中には、耕作放棄地を発電設備の用地として使うことで農業支援につなげたり、水上太陽光発電の技術を使って地域の共同資源である溜め池を有効活用する例もあります。こうした特色は需要家にとってもプラスに働くため、事前につかんでおきましょう。

設置場所

太陽光発電設備の設置場所によっては、森林を伐採して土砂災害の原因になったり、自然景観が損なわれたりすることで、地域のトラブルにつながっている例もあります。需要家としてこうしたトラブルに巻き込まれないためにも、設置場所の確認を怠らないようにしましょう。

管理体制

発電設備の運用・管理・保守の方法によっては、設備の安全性や発電効率に影響することもあります。設備が故障したときの対応も含めて、どのような技術・サービスを提供できる発電事業者なのかを、提携前に確認しておきたいものです。

もし事業者探しに迷った場合は、以下各年度の補助事業特設サイトの新着情報「公募採択事業者が決定しました」をチェックしてみましょう。

再エネの推進を追い風として、様々な事業者が太陽光発電事業に携わるようになりました。長期にわたって信頼関係を築き、同じ考え・方針を共有できる事業者を選ぶために、しっかりとした準備・調査を行いましょう。